シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 ブースに足を踏み入れると、床を這うコードにつまずきそうになった。

「おい、危ねーな」

 わたしの後ろにいた遥人が、腕をつかんで支えてくれた。自然な動きだった。
 ずいぶん優しい気がする。これってまるで……期待したくなる気持ちを押し殺す。
 今回の遥人は、衛藤先生と特別な関係にはなっていないのかもしれない。そうであってほしい、と願う。

「ねえ、未波ちゃん」

 キーボードをスタンドにセットした航が、目をきらきらさせて言った。

「これ、本当に未波ちゃんが書いたの? おいら、歌ってみたいんだけどいい?」
「え、それはもちろん……」
「よっしゃ、ボーカル権ゲット」
「あの、駄目だと思ったら遠慮なく没にして。三人に向けた歌詞を書ければよかったんだけど、結局、自分を励ますみたいな歌詞になっちゃってるし……」
「あの後さ、メロディ少しいじったから、はみ出す部分もあるかもしれない」
「そうなの?」
「せっかく書いてくれたのに、何ヶ所か変えてもらわなきゃいけないと思う。ごめんね」
「ううん、それは全然」

 遥人が航の手からルーズリーフを取り上げる。
 わたしが手書きで綴った歌詞に、さっと目を通し、平坦な声で言った。

「いいんじゃね?」