シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 教室に戻ると、亜依が机に突っ伏し、遥人は椅子にもたれて目を閉じていた。
 そういえば「一人で食べる」と啖呵を切って出たのに、のこのこと戻ってきてしまった。
 少々決まりが悪い。

「どうした? 妖精に眠らされた?」

 航が声をかけると、遥人がゆっくりまぶたを上げた。

「腹減って寝てた」
「三時から防音ブースの予約取れた。これ、昼飯。チキンサンド売り切れだったから、チーズな」
「了解、サンキュ」

 遥人が航からパンを受け取った。
 亜依が伏せていた顔をがばっと上げた。

「ちょっとちょっと、うちの分は?」
「心配すんなって。ほら、亜依どのの分」
「ありがとー。あ、余計な辛子とかソースはかかってないよね? おかしなトッピングはいらないからね?」
「かけてないよ」

 わたしは一番後ろの窓際の席についた。
 扇風機の風が当たる範囲からは少し離れてしまう。暑いけれど、ここからは教室の全体がよく見える。
 みんなと距離を置き、買ってきたパンを食べる。
 他の三人も曲作りを一時中断し、食事に集中した。
 亜依は最初に食べ終えて、遥人が書いた五線紙をのぞき込んでは、ふんふんとうなずいている。
 教室の壁、上の方にかかった時計が、乱れることなく一秒、一秒、せつなを刻む。