シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 航は遥人から受け取った五線紙に目を走らせ、キーボードに指を置く。

「bpm140くらいでいい?」
「ん、もう少し上げて」

 クリック音。
 右手で奏で始めたメロディに、左手が弾く別のメロディがかぶさる。右と左で別の音を追いかける姿は、熟練のマジシャンの技のようだった。
 遥人と航の合作。
 ジャンルとしては、フュージョンが近いだろうか。
 後にレコード会社のひとが評価してくれる、華やかなポップさが早くもにじみ出ている。
 色とりどりのお菓子を散らかしたような曲を、遥人はじっと黙って聴いている。

「……おいら好みのサウンドにはなってるんだけど、てんこ盛りにしすぎたかもしれない」
「削って仕上げるしかないだろうな」
「ちょっとうるさいっつーか、混乱しそうではあるよね……。これ以上余計な真似はせずに、シンプルを目指す?」
「ベースラインは変えずに、音符を減らすか」
「あのさ、これってボーカルはどうするの?」

 亜依が疑問をはさみ、遥人と航が口をつぐんだ。

「まさか考えてなかった……?」

 二人の無言が答えだった。