シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「夏休み入る前はそんなじゃなかった。何をするにも、もっとびくびくしてただろう。お前らしくない」

 疑われている。
 遥人にとってわたしは、一学期が終わり、数日ぶりに会ったクラスメイトという認識だ。でも本当のわたしは二十二歳の記憶を保ったまま、十四歳のふりをして、過去を書き換えようとしている。
 この合宿で何が起こるか、みんながどう行動するか頭に入っている。
 豪胆で、実は繊細な遥人が違和感を覚えるのも当然だ。
 まさかわたしの正体を見抜くことはないだろうけれど――もし、わたしの正体は八年後からやってきたわたしであると打ち明けたなら。
 ふたつの時間を何度も行き来しているのだとほのめかしたら。
 遥人はどんな反応を示すだろう。
 気味悪がるだろうか。まともに取り合わないかもしれない。タイムリープが起きたなんて聞かされても、信じられないはずだ。
 やはりここはごまかすしかない。

「遥人が思うわたしらしさって、何?」
「え……」
「亜依の陰にいつも隠れてて、滅多に発言もしない、存在感薄いのがわたしっぽい? 一人じゃ何も決められなくて、臆病な女かな?」
「そんなことは……思ってない。はかなげだとは、思ってるけど」
「はかなげ」

 遥人が言った言葉を繰り返し、視線をそらす。
 はかなげだなんて、
 見なくても、遥人が照れているのがわかった。
 わたしも恥ずかしかった。いっそ制服を脱いで、プールに飛び込んでしまいたくなる。
 参った。かわいいとか言われるよりも(ありえないけれど)破壊力がある言葉。
 遥人に守られる自分を想像して、それがちっとも嫌ではないのに気づく。わたし、遥人が好きだ。
 認めると、その気持ちは過去にも未来にもずっとあった気がした。
 伝えるべきか、ふたをするべきか。ぐらぐらと揺れ、そして答えが定まる。