シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「借りないの?」
「なかった」
「お目当ての本、誰かに借りられてたんだ?」
「ああ」
「でも、これ以上荷物を増やさない方がよさそうだものね」

 遥人は答えず、出入り口に足を向けた。わたしも続こうとして、ためらった。
 ついてくると思ったわたしがついてこないのに気づいたのだろう、遥人が振り返った。

「……」

 行かないのか、と無言で問われ、わたしは航に目をやる。正確に言えば、航が処理しなければならない本の山を。

「……手伝うか」
「うん」
「マジで? マジで手伝ってくれちゃったり? やっべー、持つべきものはいい友人だなあ」

 大げさに感激する航をこづくと、遥人が本の山を持ち上げる。

「未波ちゃんは重いもの持たなくていいから。著者別になってるか、見てくれる?」
「わかった」

 三人でやれば、蔵書整理はあっという間だった。
 司書の先生が「その友情がずっと続くように」と言って、飴を一個ずつくれた。

 航と遥人と一緒に部室へ向かう。
 やがて衛藤先生が現れ、オリエンテーションが始まる。この合宿でわたしたちが何をすべきか、淡々とした口調で説く。
 亜依がストレッチをしている陰に隠れ、わたしはそっと遥人の様子を盗み見た。もしかして、先生と特別なアイコンタクトを取ったりしていないかと思ったのだ。
 夜の逢瀬を阻止するためには、二人の行動を見張っていなければならない。
 しばらく観察を続けたけれど、遥人はいつもの無表情で、何もヒントは得られなかった。