シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「部室行かないのか」
「ん、まだ時間あるし。ちょっと探したい本があって」
「ふうん、奇遇だな」
「え?」
「俺も図書室に用がある」

 図書室には、司書の先生と航がいた。
 わたしたちが連れ立って現れたのを見て、航が眼鏡の奥の目を丸くしている。

「あれ、未波ちゃん? ……と、遥人」
「おはよう。大変だね、図書委員」
「手伝いにきてくれた? なんてことあるわけないよな。いやー、これ全部運ばなきゃいけなくてさ」

 航は本の山を指さした。
 第一図書室から第二図書室へと、蔵書を運ぶ手伝いをしているらしい。

「まだ集合の時間じゃないよね?」
「うん、ちょっと本を見たいだけ」
「そういうことなら大歓迎。あ、何か借りるなら言ってよ。本来なら夏休みに入る前に手続きしなきゃいけないけど、特別に……大丈夫ですよね? 日付のスタンプ、七月のを押しても」

 航の甘えた口調に、先生が「まあいいわ」と許可をくれる。
 遥人は荷物を床に置くと、図書室の奥へ向かった。
 わたしは科学のコーナーへ。
 前の合宿のときに無断で持ち出した色彩の本を探した。
 もとの場所に返却した記憶がない。でも、その本はあるべき棚にきちんと収められていた。
 わたしが持ち出した事実は、なかったことになっている。あの夏は消えてしまったんだな、と思った。
 正規の手続きを踏んでその本を借りる。

「これ、貸し出しお願い」
「了解」

 貸出カウンターで航が手続きをしてくれる。
 遥人は何を借りるのだろうと思って見ていると、何も手にせずやってくる。