シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 神南学院高校前のバス停で降りる。
 わたしたち以外に降りる客はいなかった。
 守衛さんに挨拶をして、学校の敷地に入ると、急な坂がある。具合が悪いときには校舎にたどり着くまでが億劫だったけれど、幸い今日は体調がいい。
 遥人はわたしを置いていくことなく、かといって後方にはぐれることもなく歩いていてた。
 わたしの歩みが遅くなっても、逆に足を速めても、わたしと一定距離を保っている。
 つまり歩幅を合わせてくれているらしい。不似合いな優しさ。
 思わず笑ってしまった。

「……何だよ?」
「どういう風の吹き回しかなと思って」

 さも不可解な顔をして、遥人はスポーツバッグをかつぎ直す。

 起伏を越え、小道を行く。
 わたしはまっすぐそちらへ向かった。小道の先にはグラウンドがある。
 ほんのわずか、遥人がためらうのが感じられ、なあ、と話しかけてくる。

「運動でもするのか?」
「まさか」
「じゃ、どうして」
「誰かいるかな、と思って。集合時刻にはまだ余裕があるし」

 前回と同じように、グラウンドでは亜依が走っているはずだ。
 木立に囲まれた小道が曲がり、視界が開ける。
 ジャージ姿の亜依がトラックを回っているのが見えた。

「玉川と待ち合わせしてたのか」
「ううん。そういうわけじゃないけど」