風になびく髪に手を伸ばすように、わたしは走った。前だけを見ていた。
 だからそのとき、頭上から何かが落ちてくるのに気づかなかった。たとえ気づいたとしても、瞬時の判断、そして筋肉への命令にかかる時間よりも、その物体が地上に落ちる方が速かっただろう。
 悪意ある人物がわたしを狙ったのか、無差別通り魔的な犯行か、それとも単なる事故で、ただわたしの運が悪かっただけかはわからない。
 落下物体はわたしを直撃し、わたしは意識を失った。