シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 いつ意識が途絶えてもよかった。
 でも、わたしの覚悟とは裏腹に、鞄を持つ手に感じる重みも、アスファルトを蹴る靴底の感覚もはっきりしていた。
 夜の渋谷を歩くのは、久しぶりな気がした。
 山奥の秘境みたいな夏休みの学校に慣れすぎて、こんなにもひとが大勢集まっている環境だと酔いそうになる。むしろ既に酔っているわけで、周囲にぶつからずに歩くのが難しい。
 最終バスは出た後だった。
 わたしはタクシー乗り場に並んだ。
 今日は何曜日だったか……。雨が降っているわけではないから、少し待てば順番が回ってきそうだ。
 携帯が震えた。帰りが遅くなるのを心配した父親からのメールだった。
 一瞬、仲間からではないかと期待した自分が悲しかった。