シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「だってわたし、あのひとのこと信用できない。自由にやれって言っておいて、こっそり中学生に手を出すようなひとだよ! 教師の立場を利用して、こっちが拒否できないのをいいことに……そんな汚い自由ってある?」
「ねえ、未波、手を出すって何の話? あんた、何かされたの?」
「わたしじゃない……。亜依は寝てたから知らないよね。合宿の二日目の夜、わたし、見たんだ」
「合宿? って、中二のときの? そんな話聞いたことないよ。突然何言ってんの」
「急に思い出したの。はっきりとね」

 亜依が少しひるんだように見えた。
 鋭い目でわたしを見下ろす遥人をにらみ返し、声に力を込める。

「夜、隠れて会ってたよね。先生とどういう関係なの?」
「話す必要はない」
「どうして」
「お前には関係がないからだ」

 はっきりと部外者扱いされて、わたしは唇を噛んだ。
 もし衛藤先生と遥人があの夏以降、特別な関係を育んでいたとしたら、その八年間を知らないわたしが、いきなり遥人の心を変えられるはずもなかった。

「衛藤さんは信頼できる。衛藤さんが紹介してくれたスタッフもだ」

 お前のことは信頼できない、と言われたも同然だった。
 遥人はトライクロマティックではなく、ベーシストとしてソロでやっていくことを選んだのだ。

 わたしは敗北感を味わっていた。
 起こった出来事が未来を決めるのではなく、出来事にどう対応したのかが、未来を決める。
 あのときのわたしの決断が、今を作った。