シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「何の打ち合わせだったの?」
「何のって……仕事の」

 遥人が面倒くさそうにまぶたを伏せた。
 航がけげんな顔で、わたしと亜依を見比べる。

「未波ちゃん、やっぱり疲れてるんじゃ……? 遥人のレーベル移籍、おいらたちも含めて何度も話し合ったよな」

 まただ。
 またわたしの知らない間に、決定事項が加わっている。
 レーベル移籍なんて憶えのない話だ。
 憶えはない、でもわたしなら絶対に反対しただろうと思う。だから言った。

「わたしは、賛成してない」
「そうだけどさ、本人がやる気になってるんだから、今更おいらたちがどうこう言う問題じゃないだろ。バンドでできることは、もう全部やったんだしさ」
「本気で言ってるの? 航、未練はないの?」
「人生のうちの短い期間を、プロのミュージシャンとして活動して、それまでとは違う注目を浴びた。そうしたくてもできない、貴重な経験だったってのはわかってる。でも、プロになる前も、この後も、変わらずおいらの人生はあって、生きてく重みみたいなものは、どの瞬間も変わらないと思う」

 つまりは未練はない――そう航は言った。これからは個人としての生活を優先するのだろう。
 亜依に話を振っても、「ラストライブが終わるまではその先のことは考えられない」とすげない。

「それで、遥人はトライクロマティックを辞めて、ソロになるの? ベース弾きながら歌うの?」
「音楽よりも演技メインになるだろうな。ドラマをやらせてもらうことになったから」

 遥人の答えにわたしは驚愕した。