わたしは息を殺して、室内の気配をうかがった。
 遥人は自分の場所に戻ったようだ。眠ったのか、眠ったふりをしているのか。聞こえてくるいくつもの寝息の中に、遥人のものがあるのかどうかはわからなかった。
 部の中で、遥人が出ていったことに気づいたのはわたしだけだったと思う。
 私が話さなければ、遥人と先生の密会の噂が広まることもない。
 でもこんな秘密を一人で抱えていけるだろうか。苦しい。
 明日が来なければいい。
 そう思いながら、若い身体は睡魔に勝てず、わたしはいつの間にか眠っていた。