シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「何かのいたずらだよね」
「ううん、いたずらじゃないよ」

 そもそもサイト更新はわたしの役目だ。
 改ざんされないよう、パスワードは他のひとに伝えていない。
 ハッキングされて流出したのか、それとも酔ったときにわたしが口走ったのだろうか……。

「冗談でしょ? 解散しないよね? ファンのひとが見たらびっくりしちゃう。すぐに消して元のページに戻すから」
「そのままでいいんじゃないかな」

 落ち着き払った声に、すっと体温が下がる気がした。
 亜依の表情が読めない。直視しているはずなのに、わからない。
 怒っているの? あきらめたの? それとも、悲しみを隠している?

「どういうこと?」
「事実だから」
「事実って……本当に解散するの?」
「うん。っていうか、未波、あんた飲み過ぎ」

 そうか、亜依は知ってたんだ。
 現実を受け止めなきゃ。ようやくわたしは思った。

「レコード会社のひとは知ってるの?」
「そのはず」
「わたしだけが知らないの? ドッキリってやつ?」
「そういうんじゃないって」
「でも何も聞いてない」