シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「遥人にとって、ベースは武器? 音楽は闘うツールなの?」
「これで何かを壊してやろうと思ったことはないけど、多分音楽をやるってことが、自由になるための挑戦になってる」
「あきらめないでね」
「あきらめねーよ。っつか、お前こそ、ちゃんとついてこいよ」

 強気な目で、にやりと笑う。
 よかった。いつもの遥人に戻った。こうでなくちゃ。
 うまく弾こうとしがちな航。力みすぎる亜依。そして負けを嫌う遥人。
 三人それぞれ、不器用なところがあるけれど、わたしの大切な友達だ。

「リーダーが俺で、名づけ親がお前か……。バンドの父親と母親みたいだな」
「父親と母親? それじゃ夫婦になっちゃうよ」
「ふっ……!?」

 わたしの返しに、遥人が声を上ずらせる。

「そっちが先に言ったくせに、まさか動揺するなんて」
「親と夫婦じゃ違うだろ」
「違わないよ。たいていの場合、夫婦が親になるんだもの」
「……減らず口」

 何よ。どうしてけなされなくちゃいけないの?
 いろいろ打ち明けてもらえたし、遥人とも仲よくなれそうだなと思ったのに。
 わたしは上履きの底を、机の脚にこすりつける。
 足の裏がかゆいわけじゃなくて、浮かんできた考えを打ち消そうとしたら、自然と足が動いていた。