シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「俺は音楽で世界を変えられるなんて思っちゃいない」
「確かに宇宙から見たら、日本の、若いバンドができることは大きくないかもしれない。でも、聴いてくれた誰か一人の心を守ることならできる」
「……できたらいいよな」
「願望じゃなくて、絶対にそうなる。今まで、音楽に救われたことがあるでしょう? 次は遥人が、誰かを救う番だよ」

 わたしは繰り返す。

「夢は思い描いている間は夢でしかないけど、実現したら現実になる。信じて。遥人は成功する。栄光をつかみ取るんだよ。その手で」

 その手で、と言ったとき、届いた、という手応えを感じた。
 遥人はネックを支える左手を見つめ、小さくうなずいた。

「やるからには、勝ちたい」

 宣言すると、弦をつま弾き始める。
 スポーツと違って、シュートを決めたとか、得点を奪ったとか、そういうわかりやすさはないけれど、音楽のかっこよさは特別だ。
 演奏者と、手にした楽器との一体感が迫ってきて、演奏者自身が楽器の一部みたいになって、どうかずっとそのままでいてください、と拝みたくなる神々しさ。
 空気を震わせ、数秒後には消えてなくなる音を、味わえるこの瞬間のありがたみ。
 どうしたって、かっこいい。
 生まれたてのフレーズを弾き終えた遥人に、わたしは訊ねた。