シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 一瞬、遥人の顔を見て、目をそらす。
 怖いひとに、あなたが怖いですなんて言えるわけない。

「こっち見ろ」

 本のページを閉じ、おそるおそる視線を戻すと、遥人は今までに見せたことのない表情をしていた。

「俺はお前が怖い。得体が知れないっつーか、何か背負ってそうで、それが何なのか、知りたいのに知りたくない……聞いちまったら、元に戻れなくなるんじゃないかって」

 つぶやきがわたしの耳の奥を通って、さらさらと胸の底に落ちてゆく。
 冷たい砂のような言葉は、確かな重みを伴っていた。
 いつも堂々としていて弱気なところを見せず、正面から風を受ける遥人の、孤独とか不安をぎゅっと凝縮した本音だった。

 親の反対を押し切って音楽をやる、という決心がどれだけの覚悟を秘めているのか、わたしにはわからない。
 学園祭向けの即席バンドならともかく、長く活動をするなら、練習時間を捻出しなければならない。
 部活程度ならばと目をつぶっていてくれた両親も、定期的なライブ活動を始めたら黙っていないだろう。
 これから起こるできごとに責任を取れるのか、自分に問いかけ、背負いきれないと思ったのかもしれない。
 黙ってしまった遥人に、わたしは微笑む。