シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「四人分買うんだから、うちだけじゃ持てないでしょうが。それとも何? か弱い乙女に全部持たせる気?」
「どこに乙女がいるんだよおおお……この怪力めえええ……」

 半ば引きずられてゆく航の声が響く。
 わたしはあっけにとられて、二人を見送った。
 気づけば教室に二人、遥人と残されていた。
 わたしを見下ろす形で遥人が立っている。

「そ、そんなにこの席がいいなら、どうぞ」

 遥人の影から逃れるように椅子から立ち上がる。
 遥人はわたしの席に座り、黙って教室を見渡した。
 このまま夏休みが終わり、二学期が来たらやっかいだけれど、そのときはそのときだ。
 一応、二十二年間生きてるんだから、教師が納得する理由くらいこしらえて、遥人にこの席を譲ってもいい。
 それにしても中二の頃に何を習っていたか、授業の内容なんてちっとも憶えていない。
 一度勉強した内容だし、全科目で百点を取れるなら、もう一度中学生をやり直してもかまわないのだけれど。