シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 亜依が黙る。ふーっと大きく息をつく。

「わかった。言いたいことを溜めずに言う方が、後にしこりが残らないって、未波も言ってたし」
「ふうん」
「へえ」

 遥人と航がそろってわたしを見た。
 何か言わなきゃ、とわたしは両手を握り締めた。

「わたしは、才能もないし、誰の音がどうとか……正直わからないけど、でも三人はすごくバランスがいいと思う。少なくとも喧嘩してるような音ではなかったから、聴いていて嫌な気持ちにはならなかった。この先どうなるんだろうってわくわくしながら聴いて、最後の音に到着した後、ああよかった、ここに来たかったんだ、って思った」

 亜依がまばたきを繰り返す。
 航は頬を紅潮させ、まるで泣きそうに見える。
 そして遥人は少しも表情を変えなかった。当然だ、という顔をしていた。もうすっかり、リーダーは遥人で決まりだった。

 その後、昼食をはさみ、それぞれが好きなアーティストを挙げ、一押しの曲を披露し合った。
 航はaikoのファンだと言った。男子の声で歌い上げるせつない恋の歌は、原曲とは違って新鮮だった。
 亜依は「ドラマーが何度か交代してるんだけど、うちの親が好きでさ」と前置きし、スキッドロウというバンドの楽曲を挙げた。シャウトしながら激しく両腕を振り下ろす姿にびっくりするわたしを、航が笑う。

「ハードロックっていうか、ヘヴィメタルだからなー。未波ちゃんには刺激強すぎるかもな」