シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 亜依は航と遥人に目くばせを送り、最後のハイハットを鳴らした。
 音が減衰して、教室内を満たすのは互いの呼吸だけになる。

「……」

 拍手以外、わたしにできることはなかった。
 ただ熱心に手を打ち鳴らした。
 ぐっとせり上がる思いがあった。
 あらかじめ決まっていた星の巡りに沿って、運命は動いてゆく。
 三人は数年後、メジャーデビューの夢をかなえる。そして、全国のリスナーが彼らの音楽を聴き、口ずさみ、愛する。夢や勇気を得る。
 求めていた入り口をようやく探し当てた。
 なのに――。

「青島」

 遥人はピックを制服のズボンでふくと、ため息混じりに言った。

「お前、うまく弾きすぎ」
「んあ?」
「正確に言うと、うまく『聞かせよう』としすぎ」
「……」

 航は難しい顔をした。遥人の言葉を受け止めかねているようだった。

「で、玉川。お前は力みすぎ。もうちょっと力抜いてけよ」
「テンポが狂ったわけじゃないからいいじゃんよ。正確に叩いたよ、うち。っていうかさ、何の材料もなくいきなり合わせたばかりで、どうしてそんな駄目出しされなきゃなんないの? あんた何様?」
「俺の音に言いたいことがあるなら言ってくれ」
「え……」
「遠慮せずお互い思ったことを言う。俺が思うバンドって、そういうものだから」