シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

「お散歩ソングか」
「散歩に限定せずに、どんなシチュエーションでも楽しんでもらいたいけど、最終的にはライブに来てほしい。生音と人工の音両方使って、聴くひとを満足させたい」
「玉川は?」
「うちはどんな音でも鳴らすよ。ブルースだって、カカオ百パーセント、渋み苦みたっぷりでいける。一年間、先輩たちに鍛えられた」

 きっぱり亜依が答えて、やっぱりかっこいいなとわたしは親友に惚れ直した。
 求められるドラムを鳴らす自信があるんだ。
 自分ならやれる。そう答える瞳は輝いている。
 わたしはそろそろと片手を上げた。

「あの……ちょっと場所作ってもいいかな? 周りの教室、誰も使ってないし、多少音出しても平気だと思うの」
「ああ、いいんじゃね」

 わたしは机を教室の後ろに、教卓を窓際に押しやり、スペースを作った。
 教壇が即席のステージになる。
 観客はわたしだけ。
 一個だけ椅子を持ってきて、とびきり贅沢な客席にわたしは座る。

 教壇の上、右から遥人、亜依、窓側に航。
 三人が意気投合するのを確信しているのはわたしだけで、肝心の当人たちは半信半疑の表情でお互いをうかがっている。
 アンプの調整が終わり、亜依がスティックをくるりと回した。