シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 音楽のための、音。
 漠然としているようで、すごく突き抜けたことを言っているようでもある。
 音楽が遥人のベースを必要としているんだ、って。
 こんなに熱い言葉はない。どんなプロポーズよりも情熱的な誘いを、ミュージシャンの卵なら聞き捨てできないはずだ。わたしが言われたわけではないのに、気分が高揚した。

「いい曲があれば弾く。曲次第だ」
「それはこれから作るよ。いやむしろ、遥人が作ってくれたらいい」
「ベース弾いて、曲も作れってか? 頼み事多すぎるだろ」
「じゃ、さらに重ねてのお願いだけど、バンドリーダー引き受けてくれないかな? キャプテンシーとかリーダーシップ的なものが、おいらには欠けてるからさ」

 遥人は無言だった。やるとも断るとも答えない。何か有利な条件を引き出そうとしているのかもしれない。
 すぐに態度を表明しない遥人に、航がたたみかける。

「おいらが歌う。鍵盤も叩く。ドラムス、ベース、キーボードのスリーピースバンドだ。ワン、ツー、スリー。アン、ドゥ、トロワ。多すぎないし、少ないわけでもない。最強の数字だと思うんだよ」

 右手の指を三本立て、航はわたしを見た。