シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~

 部室に寄り、遥人にベースとミニアンプを持つよううながし、「借ります!」と宣言して部の所有物であるデジタルドラムをつかむ。折りたたみ式で、女子一人でも持てる軽量が売り文句の製品だけれど……重い。
 大丈夫か、十四歳のわたしの身体。
 振り向けば遥人はおとなしくわたしについてきていた。シャツのボタンが上から三つ外れていて、無駄に色気を放っている。
 わたしの視線を勘違いしたのか、遥人が言った。

「持つ」
「あ、ありがとう」

 遥人はベースをかつぎ、両手にアンプとデジタルドラムを持ってくれた。
 航と亜衣のもとへ急ぐ。
 これで三人がそろう。

「お待たせ」

 待ってないだろうけれど、一応明るく声をかけてみる。

「遥人、来たよ」
「大荷物だね」

 航がくしゃっと笑って、眼鏡を押し上げる。

「未波ちゃんって意外と行動力あるねー……惚れそう」

 惚れられても困るんだけどね。わたしはあいまいに笑い返した。
 亜依がデジタルドラムを組み立て始める。
 遥人は教室に入ってきたものの、ひとことも発しない。
 航と亜依の存在を無視するように、廊下側の壁にもたれたまま。
 胸ポケットに収めた携帯から伸びるイヤホンを耳にはめ、目を閉じ、完全に一人の世界に没頭している。