――…



「結斗様、神崎様がお見えです」


「ありがとう。今向かうよ」


叶家には、「魔力人形」を欲して訪れる人々や

人形について悩みを抱えた人々が相談に来る事が多々あった。

それらに対応するのも、仕事の一環なのだ。


「お待たせしました」


「あら、結斗様ではないですか?!
いつ日本へ戻られたのですか?!」


「つい先日、父の後を継ぐために戻ってきました」


「では、今は結斗様がご当主に?
お若いのに立派ですわね」


いえ、と軽く手を振って、結斗はソファに腰掛ける。

客人である神崎夫人にも座るように促す。


「今日はどのようなご相談で?」


「実は…旦那様に魔力人形を創っていただいたのですが…」


神崎婦人の話は、つまりこういう事だった。

娘の誕生祝に、結斗の父が作った

「魔力人形」をプレゼントしたら

娘はその人形をとても大切にするようになり

それまで大切にしていた人形には目もくれなくなった…と。

「私の勘違いだといいのですが
時々その人形が
私をずっと見ているような気がして
…怖いんです…」


真剣に話を聞いていた結斗が、口を開いた。


「事情は解りました。
では、ご自宅までお伺いいたします」


そう言って結斗は立ち上がり、神崎邸に向かったのだった。