「…誰もあんたには適わないわね。
あたしの弟もマスターの候補だったんだけどね
ユイの話聞いて、諦めるって言い始めてさぁ」
「はは、それは悪い事したかな?」
「ま、所詮適わない相手だったんだから
いいのよ別に。
逆に自分の実力知れたって感じだし?」
あはは、と笑う美緒。
彼女と話していると
いつもこんな調子で
結斗は飽きない。
だが、彼女とだけ話しているわけにもいかず
結斗は「またゆっくり話そう」
と言って、挨拶周りに行った。
その後、結斗が挨拶する先々で
アリアは注目の的だった。
誰もが人形とは信じられないという
驚きの視線を向けている。
集った一族の中には
当然マスター候補の人間も多数参加している。
候補者であっても
たとえば美緒の弟のように
「結斗には適わない」と諦めてしまう者もいれば
結斗の才能を素直に認められずにねたむ者もいる。
だが、今日というこの日
この場に集った誰もが
結斗が選ばれた事を認めただろう。
いや、認めざるを得なかったのだ。
張り合っていたものは
その気さえ失ってしまっただろう。
『あんなもの』を見せられては…。

