――…
「ユイ、手紙が届いていたわ」
「ん。ありがと」
差出人の書かれていないエアメールには、一言だけ。
『本日午後4時。空港にて』
「…?」
エアメール。
外国からという事だ。
誰かが日本へ来たのか?
悩んでも仕方がないので
結斗は書いてあるように
午後4時に空港へ向かう事にした。
――…
「ねぇ、誰からなの?」
「んー、解らないんだよね。
留学の時の友達だと思うんだけど…
差出人が書いてなかったからね」
空港の案内表示を見ると
フランスからの便が午後4時に上陸予定だった。
やはり留学時の友人なのだろう。
ゲートの前で待っていると
上陸した飛行機からゆっくりと人が降りてくる。
その人々の列を見送っていくと、見知った顔を見つけた。
「…アリア…。飲み物買ってきてくれるかな?」
「 ? えぇ…」
唐突の結斗の要求に
不思議に思いながらもきびすを返す。
人込みからこちらを見つけたのか
「彼」は結斗に近づいてきた。
「…久しぶり」
「久しブリ。手紙ヲ読んでくれたんだネ」
「君だったんだね。…ジン。
まさか日本に来るなんて思わなかったよ」
「ハハ。会いに来テあげたんだヨ。
彼女と一緒にネ」
「彼女…?」
彼の周囲を見渡しても
彼の言う「彼女」と言えるような人間は誰も居なかった。
「まぁ、そのウチ紹介するヨ。
君も会いタイだろうからネ…」
「…?」
ジンは結斗に一枚のメモ書きを渡すと
大きなスーツケースを引きながら歩いて行った。
その数分後、アリアが缶コーヒーを二つ手にして戻ってきた。
「お待たせ!えと…お友達…は…?」
「あぁ。帰ったよ。
急いでるみたいで」
「そう。よかったわね。
久々なんでしょ?
「うん…そうだね…」
結斗の表情が、少し曇っているように見えた。

