――…

「ユイ!!どうしたのその怪我!!?」


帰ってくるなり、母が心配そうに駆け寄って来て言った。


「ちょっとね。色々と…」


「色々と…じゃないわよっ!
こんなに怪我して!!
まぁ…顔まで…
傷が残ったらどうしましょ…!!」


「母さん…;」


視点が少しずれている母の言葉に

結斗は苦笑する。

アリアが救急箱を持って部屋へと戻って来て

結斗は大人しくその手当てを受けた。


「ユイ…無事でよかった…」


「はは。大丈夫って言ったろ?
それよりも、僕は君が傷つかなかった事が嬉しいよ」


言って、にこっと笑う。

ほら、そうやって。

誰かを守って

自分が傷ついて

笑ってる…。


手当てを済ませると

結斗はありがとう、と言って立ち上がった。


「ユイ、少し休んだら…?」


「ん。この子を創り直してあげなきゃならないからさ」


右脚を引きずって

結斗は部屋を出て行こうとする。

振り返って、アリアを見た。


「ほら、行くよ。パートナー」


「はい」


結斗の後ろに続いて歩くアリア。









ユイ…

私は貴方が心配で仕方がないわ…。







――…





結斗は先程の人形に手直しを加え

一つの「魔力人形」として作り直した。

優しく微笑んだ、美しい人形…。


「やっぱりユイはすごいわね」


「ん?」


「怪我した身体引きずって
一生懸命になって
さっきまであんなに怖かった人形を
こんな綺麗にしてしまうなんて」


「それが仕事だからね。
自分が怪我しててもなんでも
やらなきゃならない事だよ」


この信念こそ

誰も勝つ事の出来ない要素の一つなのだろう。

結斗とそう歳の変わらない一族の者でも

彼のように「自分よりも」などとは決して思わないだろう。



扉を開け

満身創痍といった様子の結斗を労わる様に

アリアは歩きだした。