『私に触るな!!』


人形が憤るほど、結斗を襲う風の刃の威力も増す。

傷だらけの腕を下げる事無く、結斗は一言だけつぶやいた。


『ごめんね』


『…!!』


『君を創ったのが僕の一族なら、その責任もまた僕が背負うものだ。
ごめんね。ちゃんと創ってあげられなくて…』


『うるさい!!黙れ!!』


「彼女」が叫んでも、再びカマイタチが結斗を襲う事はなかった。


『…?!』


『君の中の憎悪も、魔力も、全部消させてもらうよ。
…もう…そうするしかないからね…』


結斗が触れたその手から、「何か」が吸い込まれるように消えてゆく。

「魔力」を吸収して、その人形の「命」を消滅させたのだ。

辺りに静けさが残り、魔力を失った人形が白いベンチの上に座っていた。


「ユイ…!!」


慌てて駆け寄ってきたアリアに、結斗はいつものように微笑みかけた。


「アリア、怪我はなかった?」


「私よりも貴方が…!!
早く帰って手当てをしないと…!!
歩ける?!」


「大丈夫だよ。さぁ、この子を連れて帰ろう」


結斗は静かに座る金髪の人形を抱き上げて、ゆっくりと歩き出した。
アリアは彼の側に寄り添うように歩く。


「本当は、魔力を消すとか
そーゆー解決方法は好きじゃないんだ。
出来る事なら「魂」を残してあげたかったんだけどね…
この子は、憎しみしか知らなかった。
だからこのままだと、きっと誰かを傷付けかねない。
僕一人で済んでよかった」





こんなに怪我をしてもなお、そう言って笑う結斗。

彼はどうして…自分を傷付けてまで

誰かを守ろうとするんだろう…?

何も解らなかった。