『僕の声が聴こえる?』


『誰…?』


『僕は「ドールマスター」。君達の主人だよ』


『マスター様…?!』


『君の憎悪は、いずれ本当に人を呪い殺しかねないから
僕が話をつけようと思ってね』


『私の憎しみを…貴方が消すというの…?』


『それが僕の仕事だから』


『マスター様。それは貴方でも無理です。

私のこの涙…貴方でも止める事は出来ないわ。
私は彼女を捨てたあの男が憎い…!

この恨み、消える事はないでしょう』


『君が彼女の事をとても強く想っているのは解る。

その強い想いから
彼を恨む気持ちもすごくよく解るよ。

でも、君が「彼」への憎悪を…
恨みの念を消す事が出来ないなら

僕が君の魔力を消して、君を普通の人形に戻すよ』


『そんな事を言われても…どうしたらいいか解らない…』


魔力を消す…それすなわち

生まれた「命」を奪う事と同じ。

鎮める事が出来ないのなら

それもやむを得ない事なのだ。


『簡単だよ。「彼女の幸せ」だけを願えばいいんだ。
彼女は新しい幸せを探そうとしている。
だからその背中を押してあげて…』


『それだけじゃ…私の念は消えない…』


『大丈夫だよ。こんなにも彼女の事を想えるんだから。
憎しみの念を飛ばすよりも
その分を彼女に向けて
彼女を幸せに導いてあげて?』


『はい…!私…頑張れそうな気がします…』





「もう大丈夫。この子の念も断ち切られるよ」


「本当に…大丈夫ですか…?」


「それは、あなた次第。
この子はあなたの幸せを願ってる。
君の恋人が…この人形に
あなたへの想いを託していたようにね。
だから、あなたは幸せにならなきゃいけない」


「はい…ありがとうございました…」


涙を流しながら、笑顔を見せた彼女は

とても輝いていた。