「この子は、あなたのために泣いているんだ。
あなたの心を心配して…。
悲しみが涙を流させて
痛みがその涙を赤く染めた…。
呪うのはあなたじゃなくて
あなたを捨てたという恋人です」


「彼を…呪っているというのですか…?」


「そう。あなたを泣かせてる事を
捨てた事を、酷く恨んでいる。
たとえ遠くても、本当に殺す事が出来るよ。
呪いというものは」


「そんな…!」


「大丈夫、ちゃんと鎮めますから。
でも、あなたが恋人の事で涙を流すなら
この子の呪いも消えない。
恋人のために、あなたのために
もう泣かないって誓える?」


「……」


彼女は何も答えなかった。


「忘れろって言っているわけじゃないんだ。
想いを断ち切る事は、簡単な事じゃないって
解っているから。
だから、あなたにいいものをあげる」


結斗はアリアに合図を送ると

アリアは一度部屋を出て行った。

数分後、彼女はガラスケースを両手に抱え戻ってきた。


「これは…」


「さっき創ったばかりの、僕の魔力人形。
これをあなたにプレゼントするよ。
だから、あなたはあなたの事を
本当に大切にしてくれる人と出逢って、幸せになって」


「でも私はもう…」


「大丈夫。絶対見つかる。
あなたがこの子達を大切にしてくれたら
この子達は、それ以上の幸せをあなたに届けてくれるから」


結斗は先程自分が創ったその人形を、彼女に渡して言った。


「この子達は、『そういう魔力』を持った人形だよ」


にこりと笑う。


彼女は泣きながら、人形の入ったガラスケースを抱きしめた。


「さて、あとはこの子だね」


彼女が持ってきたその人形を見つめながら

「共振」するかのように、彼はじっと瞳を見つめた。