「私は人形に呪い殺されてしまう!!」


そう言って差し出された人形。

赤い瞳から赤い血の涙を流す「魔力人形」だった。


「もうこの人形を手元に置いておく事は出来ません!!
叶様!!どうか引き取ってください!!」


おびえる依頼主は

半ば強引にその人形を結斗に突きつける。


「待ってください。お話を聞かせてください。
この人形が涙を流しているのには
何か理由があるはずです。
貴方は「呪い殺される」と言った。
…何か思い当たる事があるのではないですか?」


結斗の声に、彼女はおずおずと口を開く。


「恋人が居たんです…。付き合って二年の。
結婚も考えていました。
それなのに…
彼は私を捨てて他の女と遠くへ行ってしまったんです。

…この人形は、彼が私の誕生日に
彼がプレゼントしてくれたものなんです。
とても大切にしていました。

でも…彼に捨てられてから
この人形が、だんだんあの女に見えてきて…。
彼を奪ったあの女に!!
それで私、この人形に酷い扱いを…!

気付いたら、ぼろぼろになってて
…気味が悪くなって…
見ないようにしていたんです。
それが、ふと見たら赤い涙を流していて…」


結斗は彼女から受け取ったその人形を見やる。

なるほど、本当に赤い…

血のような涙を流している。

だがその殺意は…。

「この人形は、あなたを殺そうとはしていません」

「…え…?」

怪訝そうな顔をして

彼女は結斗と

彼の手にある人形を見た。


「この涙が証拠です。
これは、あなたの気持ちと比例しているんだ」


「叶様、おっしゃる意味が解りません…」


結斗はその人形を優しく撫でながら言った。