――…


「ユイ!!終わったのね?!」


結斗がまず訪れたのは両親の部屋だった。

扉を開けた瞬間、母が瞳を輝かせながら走り寄ってきた。


「時間かかっちゃったけど、中々な出来でしょ?」


そう言って結斗は、ガラスケースを母に渡す。

それを見た母は感動に満ちた微笑みを見せる。


「まぁ!なんて素敵な人形なのかしら!!」


遠くで見ていた父も、側へやってきて、それをまじまじと見た。


「ほぉ。たいしたものだな。
これは二つで一つ…という事か?」


「そう。恋人なんだ。
だから二人で一つ。離しちゃだめだよ?」


そう言った結斗の言葉にふいに大人の一面を見た。

きっと、フランスで素敵な恋人がいたのだろうと

父母は顔を見合わせた。


「そうだ、ユイ。二時に来客の予定が入ってる。
仕事が片付いたなら行きなさい」


「わかった。二時だね」


時計の針は十二時三十分を刺している。

まだ少し時間があるので、結斗は自室で休む事にした。


「お疲れ様、ユイ」


アリアが用意してくれた紅茶を飲みながら

しばしの休憩。

今度はどんな依頼だろうとか

考えてみたが

出てくる結論、たどり着く意思は一つだけだった。


どんな仕事でも、当たり前にこなして行く。

「マスター」として、堂々としている。


本当の自分の心の中を

誰にも悟られないように―…。