【完】キミは夢想花*



椿は私の言葉を聞いて、初めて涙を見せた。



彼は受け取ったブレスレットをギュッと握りしめ、肩を震わせる。



出来ることなら、椿の傍にいたい。

椿の傍にいて、彼を守りたい。

椿を支えたい。



「蓮…ありがとう」



彼の瞳は涙で濡れ、月明かりに照らされてキラキラしている。



それから少し、私達は思い出話をした。



楽しかった出来事。

幸せだった出来事。



まるであの頃にタイムスリップしたような感覚。



「……」



話が終われば再び沈黙が生まれた。



「……ボク、もうここへは来られないんだ」



またも沈黙を破ったのは椿。



「そうなんだ…」



夢と似たことが実際に起こり、反応に困る。



「遠くへ行くことになったんだ。ずっとずっと遠くの世界」



夢では引き留めていた。

でも、現実では引き留めることは出来ない。



ただ、その事実を受け入れるしかない。



「最後に、蓮に会えてよかったよ」