【完】キミは夢想花*



彼に見つめられた瞳に思わず吸い込まれそうになる。

それと同時に、椿の外見が数年前と全く変わっていないことに気付く。



やっぱり、そうなんだ。

椿は妖なんだと改めて思い知らされた。



「久しぶりだね」



彼は私の胸中など知らず、私に昔と何ら変わらない微笑みで言葉を発した。



「……そうだね。隣…座ってもいい?」



「いいよ」



私は彼の隣に腰かけた。



夜風がまだ少し肌寒い。

けれど心は温かくて、不思議と寒さは感じない。



「蓮は大人っぽくなったね」



「へっ!?」



突然の言葉に驚き変な声が出てしまう。



「綺麗だ」



「っ!!……そんなことないよ」



その言葉は嬉しく気恥ずかしいもの。



「椿のほうが…」



綺麗だよ。そう言いそうになった。

けれど私はその言葉を言うことをやめた。



結さんに教えてもらったこと…妖の世界で、美しいとは残酷なことだということを思い出したからだ。



「ん?」



「なんでもない」



「そっか……」