【完】キミは夢想花*



私はバイトが終わった後、あの河川敷に足を運んでみようと思った──



***



バイトが無事に終わり23時。

バイト中に降り始めてきた雨は、今はだいぶ弱まっている。

私は傘を差し目的の河川敷へと足を運ぶ。


久しぶりに来た河川敷は、あの時と何も変わっていない。



私は懐かしい思い出を思い出しながら、いつも椿と会っていた橋の近くに向かった。



するとそこには、既に先約がいた──



紛れもない。



少し離れていても分かる。



「椿……」



私は彼の名前を呟いた……



同時に私の心臓は煩く鳴り響く。



ドクン、ドクン、ドクン──



震える足を1歩1歩前に踏み出し、彼の傍に向かう。



椿の姿を目の当たりにして、声がのどにくっつき、なかなか思うように声が出てこない。



それでも彼の名前を呼ぶ。



「つ…ばき……」



私の声は彼に届いたようで、彼は顔をゆっくりと上げた。