【完】キミは夢想花*



「はぁ……」



あんな夢を見た後では、思わずため息が零れ落ちてしまう。



久しぶりだった。

椿が夢に出てきたことも、彼の姿を見たことも。



椿と会わなくなってから数日、彼との楽しかった思い出を夢見ることは多々あった。

けれどそれも、時間が経つほど見なくなっていたのだ。



それにしても先程の夢……



胸の中がモヤモヤする。



もう椿に会うことはない。

でも、彼がどこか遠くに…消えてしまうような感覚に陥る。



頭の中では、椿は私が死なない限り彼も死ぬことはないって分かっている。

それでもどこか遠くへ、消えてしまうような不安が胸に残っている。



この夢を見たことに意味なんてないのかもしれない。



けど私はこの夢を見て、そのままになんて出来ない。

もしも彼の身に何かが起きているなら、私は椿がそうしてくれたように、彼を救いたい。