「山田~、あの寝方はやばかったよ」

大盛りカレーを口いっぱいに頬張りながら轟君は言った。

「だって、おまえニタニタしながらよだれまで垂らしてんのな。
この学校の女子にしては貴重なキャラだよ。
一応お嬢様お坊ちゃま学校なんだぜ~」

貴重キャラとか、おまえが言うか!
カレー何杯目よ。
この一帯を牛耳る大地主の孫だってのにぜ~ぜん気取ったところがなくて、三ツ星フレンチより学食のカレーが好きって、まったく。
そこが轟君の魅力なんだけどね。

「あ、よだれ、ばれてた?」

「あたりめーだろ。
それに、めちゃくちゃチョーク投げられてんのに全然気付かねぇのな、おまえ。たいしたもんだよ。
磐座っちコントロール超良いぜ、全部命中してたぞ!」


雨の正体はそれだったか。
トホホ。

で、磐座っちて。


「メイちゃんは勉強し過ぎよ。学校が終わっても家で朝方まで勉強してるんでしょ?
眠くなるのあたりまえよ。
1年生の時は、音楽ってほぼ自習で曲の感想レポート提出するだけでもれなく点数くれたけど、今年からはそうはいかないわね。毎日勉強漬けのメイにとって音楽の時間が唯一、息抜きタイムだったのにね」

高1から同じクラスの真里菜ちゃんはいつでも私のことを気遣ってくれる。
おしとやかで勉強もできてやさしくて、男子からの人気も高い。

高校から私立という新参者の私にも全然色眼鏡なく接してくれた。
ほぼ100%親のコネで入学した、これと言って取り得のない私。
陰で色々言われてるの知ってるけど、真里菜ちゃんはいつも味方でいてくれる。


「でもどうすんだ?今日も家庭教師来るんだろ?
はえーとこ、おめえんとこのかぁちゃんに連絡しとかねぇと、また大変だぞ。
ほら、おめえんとこのかぁちゃん...」

「轟君!」

「だってよ~...」

「うん、わかってる。そうだね、後で電話しとく」

私は伊達巻とかまぼこが浮かぶ、甘いあんたっぷりのおかめうどんをにゅるにゅるすすった。

新任先生のホームルームが長引いたってことにするか。