きみを見ていた

30分後講堂に戻ると、磐座っちとオーケストラ部が合奏をしていた。

あ、この曲は『Tonight』

磐座っちからもらった楽譜はミュージカルWest Side Storyからの数曲だった。

美しい旋律。
オケもこんなに良いんだ!


それにしても、オケ部ってこんなに上手だったんだ~
すごく良い!

これはデュエット曲。
誰が歌うんだろう、今から見るのが楽しみだわ


そうこうしてるうちに、舞台上に歌部員たちは全員集まったような。


指揮が止まった。

「よし、歌手は皆集まったな。

じゃぁ、ソプラノ、テナーは舞台中央に並んで、メゾソプラノ、バリトンは客席に移動して」


合唱部はメゾソプラノの観月先輩以外3人が舞台に残った。

「ソプラノとテナーは、各パートの人同士ジャンケンして。

はい、しゃべってないでさっさとやる!

勝った人だけそれぞれ舞台に残って、負けた人は下手そでに移動して」



ジャンケンの勝者が舞台上に残った。

いずれもミュージカル部で、ソプラノは部長の椎名先輩、テナーは2年の男子だった。


「いいか、今日はこれからデュエットのオーディションだ。

曲目は『Tonight』

二人ともミュージカル部だし、以前から練習はして来ただろう?

じゃぁ、はじめるぞ。

オーケストラは、2ページ目の・・・ほら、なにボッとしてる!」


舞台上の二人だけではなくオーケストラはもちろん、講堂にいる磐座っち以外の全員の目が丸くなった。

ええええーーーーっっ!!
全員で歌合せとかじゃないのーーーーー!!!
いきなりオーディションなのーーーーーー!!!!


しかも、こんなに見られてる中でーーー!!!!!
伴奏はオーケストラーーーーー!!!!!!!!!


どうしよう!やだやだ!!
なんかやだ!!!!
とにかくやだ!!!!



「おい、椎名と2年のテナー。
歌うのはアップテンポになったTonight  Tonight~の小節から。
わかるな。

歌いだしはソプラノ、椎名から。

楽譜の場所大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

わぁ、さすが椎名先輩
余裕の表情と風格

見てるこっちはドキドキしてるって言うのに。



あ、前奏はじまった。
こんな時でもオケかっこいい~

そうだ、真里菜ちゃん!
すごい、弓さばきが決まってる!



さすが椎名先輩!
スラッとしてて美人で踊りが上手くて有名。

わぁ、歌もものすごく練習したんだろうなぁ~
ちょっと高音にふらつきがあるけど、きちんとおなかから声出そうとしてる。
だって、歌って踊っちゃうんだもんね。
踊りも歌もこなすなんて、ミュージカルってすごいわぁ~・・


2年のテナー君は、緊張しっぱなしって感じ
音質自体はちょっと低いからバリトンに近いテナーかな

ううっ、高音苦しそう~

でも、椎名先輩相手にがんばってるよ!
すごいよ、すごいよ~!!


って・・・私何様???

ああ、どうしよう~やりたくないよ~


あ、私真っ先に負けたんだった。
ジャンケン。

順番の最後って・・・いいんだかわるいんだか。
待つのもなかなかつらい

もう、なにがなんだか分かんないや~



でも、一番わかんないのは、自分の気持ち。


いやだってことはわかるんだけど、
どうしていやなのかはわからない。


緊張してるのかな~
恥ずかしいのかな~
面倒くさいのかな~


とりあえず、この3つが原因ではないらしい。


う~む・・・


あっ!椎名先輩歌い終わった!

さすがの貫録!皆の惜しみない拍手!
マリアそのものって感じ。
もう、オーディションなんかしないで椎名先輩でいいのに、マリア役!

あ、舞台そでで次に勝った人がスタンバってる。




「次は、一番負けた奴出てこい」


でた、磐座っち。

・・・うすうすそんな気はしてたんだ。

ほら、磐座っちのことでしょ?

普通の流れじゃないんだろうなってことは感じてたんだけどね。




ああもう、
どうにでもなれ!