きみを見ていた

『放課後、講堂に集合せよ』

もう少しで音楽室に着くころ、磐座っちからコーラス部にLINEが飛んできた。

「講堂?」

ガラッ
音楽室の戸が開き、スマホをのぞきながら瀬戸先輩が出てきた。

「あ、山田君。
ライン見た?」

「はい。
なんでしょうね」

「とりあえず、行ってみよう」

講堂に近づくと、オーケストラが各々音出しをしていのが聞こえる。
客席側から中央の扉を開けると音量が増した。

オケピから10列ほど開けて生徒たちが15-6人ほど座っている。
ミュージカル部の部員たちだ。
その先には磐座っちいる。
磐座っちがしゃべるたびに皆楽しそうに笑う。

私たちに気付いた磐座っちは『こっち来い』というジェスチャー。
その群れに近づくと、コーラス部の別の部員2人も既に座っていた。
磐座っちに近い一番前の席で。
しかも、真ん中が2席開いている。
「先輩たち、こっちこっち!」
一年の橘紗栄子が手招きする。
ゲッ。この場合、私は磐座っちから一番遠い席が良いのだが、そうもいかず。

瀬戸先輩と私が席に着くと、磐座っちがオーケストラに音出しを止めるよう伝えた。

一気に静かになった。

ん・・何が始まるのかしら。

「これ一枚ずつ回して」
磐座っちが紙を配るよう最前列の男子に指示した。

楽譜?数曲分ある。

「みんな、手元に渡ったかな?

これは今年の文化祭でミュージカル部、コーラス部、オーケストラ部合同で行うガラコンサートの曲候補だ。

ソロ、デュエット、合唱と用意してある。

合唱は全員で。

ソロとデュエットについては、オーディションで決めるからそのつもりでな」


私は合唱だけやればいいからっと・・・

「オーディションは全員参加だからな。

じゃぁ、とりあえず今日は合唱からやろう。

30分後に合わせるから舞台に集まれ。

それまで各自楽譜読んでおくように」



いやいやいやいや。
私は合唱だけでいいですよ。
オーディションとか、結構ですから、勉強しなきゃなので。

やばっ。
磐座っちと目が合いそうになった。

とっさに、気づかれないように避けたけど大丈夫だったかな。

「オーディションに・・・」

ドキッ

「理由なく参加しないやつは、生活態度に問題ありとするからな。
みんな、しっかりやれよ!

じゃ、30分後!」


遅かった。顔見られてた。心読まれてる。