「ふんふ~ん」
「メイちゃん最近機嫌が良いね。
なんかいいことあったの?」
梅雨の季節。
小雨の降る帰りの並木道で真里菜ちゃんが言った。
「わかる?
実はね、磐座っちとはここ数日、教室以外で会ってないの」
私は弾むように答えた。
「そうなんだ。
メイちゃん、磐座っちのこと何となく苦手だって言ってたもんね。
オケ部には毎日顔出して必ず30分~1時間くらい指揮してるけど、それ以外ではコーラス部に行ってると思ってた。違うの?」
「うん!来てない。
二日に一曲のくらい課題曲出してくんだけど、それをそれぞれ練習したり、合唱曲は人数少ないけど合わせたりしてる。
のびのび練習できて気が楽よ~
ふふ~ん」
「メイちゃんの歌、聞いてみたいな。
一年から一緒のクラスだったけど、メイちゃんとはカラオケも行ったことなかったし、どうやって歌うのか見てみたい」
「そう?
そうよね。私、勉強で忙しかったもんね。
って、今も忙しいんだけど」
「でも、小テストの点数も上々だし、部活も勉強も両立できててすごいと思うよ!」
真里菜ちゃんは知らないのだ。
いや、誰にも知られてはならないのだ。
まず、磐座っちが家庭教師だという事を。
しかも、最近では家のパソコンにメールで『次回の小テスト』回答プリントが届くのみで、家庭教師の役目すらすっぽかしてるのだけれど・・・こちらももちろん、知られてはならない。
いや、小テスト・・こっちの方がむしろ知られてはやばい。
・・・「ああ、お母さん。
大丈夫ですよ。
毎日自宅で予習復習できるよう、特別な課題を渡して、学校で毎日チェックしてますので。
ほら、おかげで小テストの結果も上々です。
期末試験が今から楽しみですね~」・・・
言い方も上手いし、抜け目もなくて、ママ大喜び。
ああ、磐座っち、あやつ何者。
「磐座っちもあちこちの音楽部かけ持ってるから忙しいんだね。
私たち、いつの間にか磐座先生のこと磐座っちって呼んでるね。
なんか、おかしい!磐座っちって響き。
かわいいよね」
キャハハ、と笑う真里菜ちゃん。
確かに、真里菜ちゃんが言ったら可愛いい。
私が言うとひねくれた響きになってない?
だって、先生って呼びたくないから磐座っちって呼んでるんだもん。
「ねぇねぇ、どんな曲歌ってるの?」
「ん・・童謡とか歌謡曲でコーラスになってるのとか。
ま、コーラス部の定番的な?感じのものね」
「へぇ~、定番ねぇ。
あ、世界で一つだけの花とか?そんな感じの?」
「そうそう、それもやったよ。
オケ部は?
そう言えば今日部室の前通ったら、すごく軽快な曲やってたね」
「うん、今年の文化祭でミュージカル部と合同でガラコンサートの話が出てるの。
それで、試しにミュージカルナンバーを何曲かやってるんだけどね、
さすが世界のオーケストラで指揮してきたマエストロだけあって、オケ合わせるのが楽しくって。
意外とラテン系なのよ磐座っちって。
指揮してるとかっこいいんだよ~
オケ部の女子は指揮する磐座っちにくぎ付けよ。
まぁ、男子もだけど。
指揮者なんだから当たり前か。ハハ」
「モテてんの?オケ女子から」
「それはないんじゃないかな~
あくまでもマエストロとしか見てないと思うよ。
まぁ、オーケストラとマエストロってそんな関係かも。
マエストロに恋に堕ちるって言う楽団員、あんまり聞かなくない?
くぎ付けにはなっても、そん時だけかなぁ~って。
世界的に見ても、指揮者と楽団員のカップルっているのかなぁ~」
「ごめん、全く分かんないや」
「はは、言っといてなんだけど、私もわかんな~い。へへ」
真里菜ちゃんのこういうケ・セラセラなところも好きなんだな、私は。
梅雨のうっとうしい雨も、真里菜ちゃんとなら晴れた日と変わらない会話ができる。
「メイちゃん最近機嫌が良いね。
なんかいいことあったの?」
梅雨の季節。
小雨の降る帰りの並木道で真里菜ちゃんが言った。
「わかる?
実はね、磐座っちとはここ数日、教室以外で会ってないの」
私は弾むように答えた。
「そうなんだ。
メイちゃん、磐座っちのこと何となく苦手だって言ってたもんね。
オケ部には毎日顔出して必ず30分~1時間くらい指揮してるけど、それ以外ではコーラス部に行ってると思ってた。違うの?」
「うん!来てない。
二日に一曲のくらい課題曲出してくんだけど、それをそれぞれ練習したり、合唱曲は人数少ないけど合わせたりしてる。
のびのび練習できて気が楽よ~
ふふ~ん」
「メイちゃんの歌、聞いてみたいな。
一年から一緒のクラスだったけど、メイちゃんとはカラオケも行ったことなかったし、どうやって歌うのか見てみたい」
「そう?
そうよね。私、勉強で忙しかったもんね。
って、今も忙しいんだけど」
「でも、小テストの点数も上々だし、部活も勉強も両立できててすごいと思うよ!」
真里菜ちゃんは知らないのだ。
いや、誰にも知られてはならないのだ。
まず、磐座っちが家庭教師だという事を。
しかも、最近では家のパソコンにメールで『次回の小テスト』回答プリントが届くのみで、家庭教師の役目すらすっぽかしてるのだけれど・・・こちらももちろん、知られてはならない。
いや、小テスト・・こっちの方がむしろ知られてはやばい。
・・・「ああ、お母さん。
大丈夫ですよ。
毎日自宅で予習復習できるよう、特別な課題を渡して、学校で毎日チェックしてますので。
ほら、おかげで小テストの結果も上々です。
期末試験が今から楽しみですね~」・・・
言い方も上手いし、抜け目もなくて、ママ大喜び。
ああ、磐座っち、あやつ何者。
「磐座っちもあちこちの音楽部かけ持ってるから忙しいんだね。
私たち、いつの間にか磐座先生のこと磐座っちって呼んでるね。
なんか、おかしい!磐座っちって響き。
かわいいよね」
キャハハ、と笑う真里菜ちゃん。
確かに、真里菜ちゃんが言ったら可愛いい。
私が言うとひねくれた響きになってない?
だって、先生って呼びたくないから磐座っちって呼んでるんだもん。
「ねぇねぇ、どんな曲歌ってるの?」
「ん・・童謡とか歌謡曲でコーラスになってるのとか。
ま、コーラス部の定番的な?感じのものね」
「へぇ~、定番ねぇ。
あ、世界で一つだけの花とか?そんな感じの?」
「そうそう、それもやったよ。
オケ部は?
そう言えば今日部室の前通ったら、すごく軽快な曲やってたね」
「うん、今年の文化祭でミュージカル部と合同でガラコンサートの話が出てるの。
それで、試しにミュージカルナンバーを何曲かやってるんだけどね、
さすが世界のオーケストラで指揮してきたマエストロだけあって、オケ合わせるのが楽しくって。
意外とラテン系なのよ磐座っちって。
指揮してるとかっこいいんだよ~
オケ部の女子は指揮する磐座っちにくぎ付けよ。
まぁ、男子もだけど。
指揮者なんだから当たり前か。ハハ」
「モテてんの?オケ女子から」
「それはないんじゃないかな~
あくまでもマエストロとしか見てないと思うよ。
まぁ、オーケストラとマエストロってそんな関係かも。
マエストロに恋に堕ちるって言う楽団員、あんまり聞かなくない?
くぎ付けにはなっても、そん時だけかなぁ~って。
世界的に見ても、指揮者と楽団員のカップルっているのかなぁ~」
「ごめん、全く分かんないや」
「はは、言っといてなんだけど、私もわかんな~い。へへ」
真里菜ちゃんのこういうケ・セラセラなところも好きなんだな、私は。
梅雨のうっとうしい雨も、真里菜ちゃんとなら晴れた日と変わらない会話ができる。
