きみを見ていた

「ひやぁ~、やっと終わった~」
放課後の部活。
やっと腹筋と背筋トレーニングが終わった。

「はい、水飲んで」

「ありがとうございます」

瀬戸先輩はいつも優しい。

「じゃ、次は先輩の番ですよ」

私は先輩の足先を抑えた。

「いち、に、さん・・・」

瀬戸先輩はすごいスピードで上半身を起こす。
勉強も運動も出来て、先輩はすごいなぁ~

・・・で、そろそろかな~


「おっ!今日もスポーツに勤しんでるね、瀬戸君!
感心感心!」

やっぱり。

「いや~、その上半身を起こすスピード!
さすが元サッカーで鍛えただけのことは有るなぁ~
我○○学園中等部のサッカー部キャプテンとして、県内優勝へと導いただけのことは有るよなぁ~」

「いつもせいが出るな、純平!
練習の途中だろ?
高校サッカー部の主将がいつもさぼってていいのか?」

「サボってなんかないさ。ちょっと休憩。
しかし瀬戸伸二、コーラス部が今年に入って運動部になったってもっぱらの評判だぞ!
オレたち顔負けな練習メニューじゃんか。
しかも、2年間死んでた部が今年に入ってどうしたんだって。
まぁ、それもこれもあのイッケメーン教師のおかげなんだろうけどな。

あの先生、コーラス部にミュージカル部、オーケストラ部はもちろん、演劇部まで指導してるらしいじゃないか。
もともとうちの学校は運動部は盛んだけど、音楽系は弱かったからなぁ~。

それなのに、おまえったら高校入って急に“コーラス部作る!”なんて言い出すから俺はこいつ気でも違ったかと思ったぜ。

成績優秀でスポーツ万能、全校生徒の憧れの的のサッカー部主将がまさかなぁ~。
裏切られた気持ちだったよ。

毎日音楽室で細々と練習するおまえを見て心痛かったよ。
もっとちゃんと反対してやればよかったって。

でもまぁ、神様はいるのかもなぁ~
今んとこ、あの先生やる気出して指導してくれてんだろう?
はじまったばかりだから、まだ何とも言えないけど、最後まで部活見てもらえたらなんて思うわけだよ。
おまえの幼なじみとしてな。
高校3年にしてやっとだからよ~」

「50!フー。
じゃぁ、次は背筋だね。

ほら、小泉純平!あっちで呼んでるぞ!」


「おっ、いけね。じゃぁ、俺行くわ。
メイちゃん、こいつサボらないようにしっかり足つかまえておいてくれよ!
じゃぁな」

小泉先輩は軽くウィンクをして去って行った。
ハツラツとしていておおらかな先輩。
まわりで見守る女生徒達がキャッキャ言ってる。

いつもこの時間に来ては同じような話を繰り返す。
瀬戸先輩とサッカーしたかったんだな。
瀬戸先輩のことが心配なんだな。
瀬戸先輩のこと好きなんだな、ってすごく伝わる。

親友っていいなぁ、うらやましいなって
この二人のやり取を見ていつも思う。