エッホ エッホ エッホ・・・
放課後、裏の土手を一周する。
往復で約3キロ。
はじめてすでに1ヶ月。
戻ったら体育館でストレッチ、柔軟体操そして・・・
「よし、腹筋背筋100回ずつ!できるまで水飲むな!」
鬼のような言葉を放つ磐座先生。
はじめは本当に辛かったけど、人間って進化するものね、今では何とかついて行ってる。
「いいぞ、山田!あと30回!29・・28・・」
今日のペアの瀬戸先輩。
そっと足を抑えながら腹筋する私を励ましてくれる。
先輩との出会いは去年の入学式の日。
部活なんてとんでもないと、勧誘する先輩たちを振りきり、待っている車に乗ろうと校門に近づいた時、後ろからふいに腕を掴まれた。
「えっ!」
驚いて振り向くと、桜の舞い散る中、背が高く、甘いマスクの男性がこちらを見ていた。
「き、君・・・」
「??」
「君・・新入生?見かけない顔だけど、他の中学からきたの?」
「は・・い」
「あ、そう。
帰ろうとしてるね。ということは部活まだ入ってないよね。
よし、君は今日からコーラス部だ!さ、ここにサインして」
「え?」
「あ、僕はコーラス部部長の瀬戸です。
君より1つ学年が上だよ。
まだ部員は僕ともう一人の二人しかいないんだけどね。
コーラス部自体、去年からできた新しい部なんだよ。
君で三人目。どう?いっしょにやらない?」
「どうして、私が・・」
「ん?ああ、
実はほら、うちにはミュージカル部と演劇部があるだろ?
そこに人員取られちゃってコーラス部は見向きもされないんだ。
僕のファンは多いんだけど、それがなかなか“高嶺の花でいてください”って、入部はしてくれなくてね」
「なので、なぜ私」
「まぁまぁ、いいじゃないか!
部活決めてないんだろう?」
「私、事情があって部活する暇ないんです。
ごめんなさい」
「おっと!行かないで!
それなら、こうしよう。
名前だけでいいから。ね!
さすがに2年目で部員が一人も増えてないとなるといよいよ廃部にされちゃう。
人助けだと思って、入部してくれないかな?」
長身で甘いマスクの先輩。
そんな爽やかにお願いされたら・・・
「わかりました。時間ないので名前だけ書きます」
断れないじゃないですか。
「でも、たぶん、確実に幽霊部員ですが
いいんですか?」
「ああ。
でも、たぶんきっと」
「え?」
「いや、ありがとう」
笑顔で手を振りながら去ってゆく先輩を見て
「一緒に歌えたら楽しいだろうな」
と、ポツリと言った。
でも、その言葉はすぐに風に消された。
私を乗せた黒い車が山田家へと急ぎ出発した。
放課後、裏の土手を一周する。
往復で約3キロ。
はじめてすでに1ヶ月。
戻ったら体育館でストレッチ、柔軟体操そして・・・
「よし、腹筋背筋100回ずつ!できるまで水飲むな!」
鬼のような言葉を放つ磐座先生。
はじめは本当に辛かったけど、人間って進化するものね、今では何とかついて行ってる。
「いいぞ、山田!あと30回!29・・28・・」
今日のペアの瀬戸先輩。
そっと足を抑えながら腹筋する私を励ましてくれる。
先輩との出会いは去年の入学式の日。
部活なんてとんでもないと、勧誘する先輩たちを振りきり、待っている車に乗ろうと校門に近づいた時、後ろからふいに腕を掴まれた。
「えっ!」
驚いて振り向くと、桜の舞い散る中、背が高く、甘いマスクの男性がこちらを見ていた。
「き、君・・・」
「??」
「君・・新入生?見かけない顔だけど、他の中学からきたの?」
「は・・い」
「あ、そう。
帰ろうとしてるね。ということは部活まだ入ってないよね。
よし、君は今日からコーラス部だ!さ、ここにサインして」
「え?」
「あ、僕はコーラス部部長の瀬戸です。
君より1つ学年が上だよ。
まだ部員は僕ともう一人の二人しかいないんだけどね。
コーラス部自体、去年からできた新しい部なんだよ。
君で三人目。どう?いっしょにやらない?」
「どうして、私が・・」
「ん?ああ、
実はほら、うちにはミュージカル部と演劇部があるだろ?
そこに人員取られちゃってコーラス部は見向きもされないんだ。
僕のファンは多いんだけど、それがなかなか“高嶺の花でいてください”って、入部はしてくれなくてね」
「なので、なぜ私」
「まぁまぁ、いいじゃないか!
部活決めてないんだろう?」
「私、事情があって部活する暇ないんです。
ごめんなさい」
「おっと!行かないで!
それなら、こうしよう。
名前だけでいいから。ね!
さすがに2年目で部員が一人も増えてないとなるといよいよ廃部にされちゃう。
人助けだと思って、入部してくれないかな?」
長身で甘いマスクの先輩。
そんな爽やかにお願いされたら・・・
「わかりました。時間ないので名前だけ書きます」
断れないじゃないですか。
「でも、たぶん、確実に幽霊部員ですが
いいんですか?」
「ああ。
でも、たぶんきっと」
「え?」
「いや、ありがとう」
笑顔で手を振りながら去ってゆく先輩を見て
「一緒に歌えたら楽しいだろうな」
と、ポツリと言った。
でも、その言葉はすぐに風に消された。
私を乗せた黒い車が山田家へと急ぎ出発した。
