頭から血を流して横たわっている男達はびくともしない。

起きるのだろうか?

「私を助けてくれた恩人さん、この人達死んでないの?」

彼の名前を知らない私は、彼をそう呼んだ。

「この街に住んでる奴がこんなんで死ぬわけないだろ。ほら、行くぞ。」

彼は私の手を取り、引かれるまま彼に付いて行った。

「お前どこから来たんだ?送っててやるよ。」

「イーストの12スラム街…」

「随分遠くから来たな。」

「うん…」

「今日誕生日なんだろ?家族待ってんじゃないのか?」

「待ってるけど…待ってない…」

「ハハッ、どっちだよ。」

会ってから始めて見る彼の笑顔は、一瞬だったけどずっと見ていたくなる笑顔だった。

「あなたはどこに住んでるの?」

「俺はこの街だ。」

「えっ…ここ?」

「ああ、生まれも育ちもこのゴーストタウン。」

スラム街よりももっと酷い環境だ。

ここに私と同じくらいの子が住んでるなんて…

「だけどいつか出て行ってやるんだ。この掃き溜めから。
そのためならどんだけ足掻いてやってもいい。」

「足掻いて…」