「おい、大丈夫か?」

覆い被さる重みが消え急に視界が開けたかと思えば、そこには私が動かすのに苦戦していた男を片手で持ち上げ立っている、私と同じくらいの男の子がいた。

着ている服はボロボロで、顔も煤けているけど、とても整った顔の男の子だった。
そして、男を持ち上げる手とは反対の手には赤く染まった鉄パイプを持っている。

どうやら彼が助けてくれたらしい。

「なんとか…」

「ほら、立てるか?」

男を放り投げると、手を差し出された。

私はその手を迷うことなく握る。

「助けてくれてありがとう。」

「俺がたまたまここにいて幸運だったな。」

力強い手が軽々と私を立たせると、手は直ぐに離れていった。

「そうね。最悪の誕生日だと思ってたけど、あなたが来てくれてちょっとは良くなったわ。」