少年と少女 ~出会い~

「俺の師匠、って言っても俺が勝手に呼んでるだけなんだけど、その師匠が嫌なら足掻けって…足掻いて足掻いて足掻ききってゴールドタウンまでのし上がってみろって!」

「私も…」

「ん?」

「私も足掻いてみたい。この世界で…」

この廃れた世界で。



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私は迎えに来た男に連れられ家を出た。

振り返っても、そこに父親の姿はない。

これが最後だというのに見送りにさえ出てこない。あいつはそういう人間だ。


『顔は"あの女"にそっくりだからな。』


色に売られたと聞いた時…
私の顔を見て忌々しく吐き捨てるように言う父親の顔には、心底嫌なモノを見る嫌悪感とどこか悲しげな表情が入り混じっていた。

始めは金のために私を売ったんだと思ったけど…
あの表情は、私の顔を見るのが辛いのもあったんだろうなと思ったら、この家を出ていくのも悪くないかな…ってあの人に出会うまではそんな風に考えてた。


だけど、今は…

私のためにこの家を出て行こう。

人に言われて出ていくのと自分の意思で出て行くのとじゃ全く違う。

私もこの世界に足掻いてやる。



そうして私は二度と後ろを振り返らなかった。