『でも、今はそれどころじゃ……‼』
わかってる。
そんなことよくわかってるけど、でも尊琉君に酷いことしたばっかなのに、今から魁を探して尊琉君を放っておくなんて出来ない。
理由を話したとしても、結果的に尊琉君を巻き添えにするならそれは嫌。
もう裏切らないって決めたんだもん。
私は尊琉君と一緒にいるって決めたんだもん。
だから行く訳には――……
『バカ‼あんたの魁に対する気持ちはその程度だったの!?』
突然彩葉の怒鳴り声が聞こえて、ビクッと体が震えた。
『言ったよね?“無理してないよね?”って。今の桜綾は、全然いつもの桜綾じゃないよっ‼』
本気で、彩葉は怒っている。
『尊琉君の事が本当に好きなら、それでいいって確かに言ったよ!?でもそれで桜綾が桜綾でなくなるなら、私は嫌よ‼』
「そ、そんなこと……」
『心の底から笑ってるの!?ちゃんと楽しいって思えてるの!?本当は、尊琉君に悪いからとか、写真のことで自分の気持ち押し殺してるんでしょっ!?』
「……っ」
どうして私、何も言えないの?
どうして“違うよ”ってたった一言言えないの?
後悔してないはずだよ?
楽しいってちゃんと思えてるんだよ?
『ずっと前に逢織が言ったこと覚えてる?「自分の気持ちに嘘つかないで」って言ったよね!?今のその桜綾の気持ちは、本心なの!?』
段々と、彩葉の声が途切れ途切れになってきていた。
泣いてる……
『ねぇ桜綾っ‼本当に、そうなの!?』
真剣になって、怒ってくれて、とても苦しそうだ。
彩葉の言ってることもよくわかる
だけど――
『違うんでしょ!?』
「……そうだよ」
だけど。
「本心だよ。私は尊琉君が好きなの。だから……ゴメンね」
もう私は、尊琉君を裏切れない
例えこれから何があったとしても。
あんな優しい人を、見捨てるなんてできないよ。
ゴメンね、彩葉。
私にはそんな資格なんてない。
そう言って私は、彩葉の電話を切った。
彩葉が何て言ってたのか、知らないまま。



