……魁に会いたくなかったな。それも今は特に。
自然と地面に視線が行ってしまう。
暗くて魁の顔があんまりわからなくても、見れなかった。
「どうしたの?私もう帰るよ」
玄関はもうすぐそこ。
あと数歩歩けば届くのに。
魁が目の前に立ち塞がって通してくれない。
「お前に、どうしても言いたいことがあるんだ」
そう言って魁は、私の腕を掴んだ。
「お願いだから、顔上げて……?」
苦しそうな、辛そうな声が上から聞こえた。
そんな声で言わないでよ……
どんなに私が堪えてるか知らないくせに。
そんな風に言われたら、言うとおりにするしかないじゃない……
「よかった。やっと俺の顔見てくれた」
嬉しそうに微笑んで、腕を離してくれた。
その笑顔は、私の大好きな笑顔。
――いや、大好きだった笑顔。
こんな優しい笑顔を向けられたのは、初めてかもしれない。
「ゴメンな。ちゃんと謝りたかったんだ、今までのこと」
今までのこと……?
「今までずっとお前と過ごす時間が多くて、一緒にいてさ。一番お前のこと信じなきゃいけなかったのにな。噂の時も、それ以外も。なのに俺何もわかってなかったから、今までどれだけお前のこと傷つけたのかわかんねぇよな……」
曖昧なことばかりしか言わないから
意味がわからない。
魁の言ってることがわからない。
「俺ホントばかだった。目の前のことしか考えてなくて、周りなんて全くわからなかった。お前の言ってた意味が、やっとわかったんだ」
自嘲めいた笑みを浮かべて、魁は黙り込んでしまった。



