*魁side*



「そっか……。桜綾は尊琉君を選んだんだ」


「大分アタックしてたしな、あいつ。それぐらい片桐のこと好きだったんだと思う」




いつまで経っても連絡1つない俺を心配して、遼也と彩葉が来てくれた。


俺の様子を見ただけで、2人は何となく予想がついていたようだ。




「俺……何でもっと早く気付かなかったんだろ。バカみてぇ……」



後悔ばかりで、まだ自分の中で納得がいかない。



「私も魁はずっと桜綾のことが好きだと思ってたけどね。でも桜綾も積極的じゃなかったし、素直じゃないから気付かなくても仕方ないんじゃない?」



『私は何度も素直になれって言ったんだけどなぁ』と呟いて、彩葉は溜め息を1つ。



「尊琉君もいい人に違いないから、桜綾は幸せになれるとは思うけど……」


「やめろよ。今はそいつの名前聞きたくない」



悔しい。俺はきっとあいつみたいに積極的になれなかったから。


どうやっても勝てない。




「……でもさ、多分あんたはわかってなかったと思うけど」


「何だよ?」



彩葉を見上げると、不気味なくらいニヤリと笑っている。




「桜綾ってね、いっつも魁のことばっかり見てたの。一時なんて『見てるだけで幸せになれる』ってぐらい言ってたんだよ?
だから今はそうじゃなくても、確かに魁は桜綾にすっごく愛されてたよ、一途に、ただ真っ直ぐに。これだけは絶対に言える」




ダメだ……そんなこと言われたら益々あいつのことが頭に浮かんでくる。


後悔ばかりが募っていく。


今も、その気持ちでいてほしかった。



「私も本当は、魁を選ぶと思ってたのにな……」



言いにくそうに、ボソボソと漏らす。



「俺だって、それならどんなにいいだろうって、ずっと思ってたよ」