そう吐き捨てて戻ってきた彩葉。
魁も遼也を連れてどこかへ行ってしまった。
「桜綾。いつだって堂々としてていいんだよ。私たちがついてるから」
「ありがとう……」
背中を押されて、私はいつもの自分を取り戻した。
平気、くよくよしたくない。
「それにしても……あいつ……」
彩葉が険しい顔で魁のいた場所を見つめる。
「ちょっとビックリしたよね……まさか魁君があんなに怒るなんて」
「私も少し怖かった……」
結構大きい声だったから、この階の廊下には確実に響き渡っただろうな……
いつもの魁と比べたらあんなの別人だしね。
「一体何考えてるんだか」
彩葉はハァ、と大きく息を吐いた。
「あいつがあんなこと言える立場か?あの男と同じようなことしてたくせに」
「確かにそれはそうだね」
あ、そういえばまだ3人に言ってなかったな……
「あのね、魁すごく反省してるみたいで、前に私に謝ってきたの」
「へ?」
「ごめんごめん、言い忘れてた。前にも今と同じことがあって、絡まれてお金盗られそうになってた時に魁が助けてくれたの。さっきみたいに、『こいつはそんな女じゃねぇ‼』って言って」
「ちょっと待って、そんなことあったの!?いつの話!?」
「え……でも結構最近だよ」
「何で言わないのよ~‼」
彩葉に首を掴まれてブンブンと揺らされ、私はまた転けそうになる。
「だってどう言えばいいのかわからなかったし……」
そんな余裕もなかった。



