好きが涙に変わって溢れてく。


瞳の声に、私は振り向いた。


彩葉はその男子を睨み付けながら歩み寄り、目前まで来ると無言で彼の胸倉を思いきり掴んだ。



「彩葉っ」



集団の中にいた遼也の声も無視して、彩葉はひたすら男子を睨み付けている。



「な、何だよお前……」



彩葉の怒りは収まらず、男子に向かって手を振りかざした時。


掴んでいたはずの胸倉が、するりと彩葉の手から抜けた。



「うっ‼」



ドンッ、と壁に押し付けられた彼。


呆然と見つめる私たち。



彼の胸倉を掴んでいたのは……






「おい……てめぇ今何て言った」



顔を近付け、低くそう言い放ったのは魁だ。



怒りに満ち溢れた形相に、そこにいた誰もが言葉を失っている。



「か、魁?」


「何て言ったっつってんだよ‼」



再び彼の背中を壁に押さえつけて、怒鳴りつける。

男子は驚いていて、何も言えないようだ。



「あいつはそんな女じゃねぇんだよ。何も知らねぇ奴がわかったような口叩くんじゃねぇ‼」



今にも殴りかかりそうな魁を止めたのは遼也。


彼は初めて見る魁の姿に怯えながら、恐る恐る私を見た。



「ご、ごめん」



許すことの前に、そう言われたことすら忘れていた私。


魁の行動には本当にビックリして、まさか一緒にいる友達にもあんな行動とるなんて思ってもみなくて……




「二度と桜綾の悪口言わないでくれる?一緒に笑った奴も本当に最低。男として恥ずかしいと思わないの?ほんとありえない」