本当は放課後まで保健室にいるのはダメなことなんだけど、先生に無理を言っていさせてもらった。
どこにいればいいのかわからなかったし、動く体力もなかったから。
さすがにこの時間になると、瞼の腫れが引いていつもの自分の目に戻っていた。
すでに水になっているビニール袋とタオルを先生に返して、帰ろうとした時。
保健室のドアが開いて、尊琉君が安堵の笑みを浮かべた。
「よかった……いてくれて」
本当に尊琉君は私を迎えに来てくれた。
先生に挨拶だけして歩いていると、尊琉君はそっと口を開く。
「目、いつもに戻ったじゃん」
「ずっと氷で冷やしてたからね。尊琉君が持ってきてくれたおかげ」
「桜綾ちゃん見てすぐにわかったよ。あんな泣きはらした目してるからな」
「あんまり合わせないようにしてたんだけどね」
お互いに笑顔になって、尊琉君もいつもの優しい人に変わりなくて、変な緊張感もすぐになくなった。
「今までよく頑張ったな」
意味深な発言に、私は首を傾げる。
すると、尊琉君は寂しそうに微笑んで私の頭を撫でた。
「ずっと泣くの我慢してたの、知ってたから」
うそ……
「図書室の時も、明菜って子が絡んできた時も、それから……昨日も」
全部全部、魁のことを思って。
悔しくて悲しくて、自分が情けなくて、だからせめて涙だけはいつも押し殺してきた。
弱いと思われたくなかったし、そんな私に気付かれたくなかったから。
尊琉君は知ってたんだ。



